学会誌「産業・組織心理学研究」

大学生の職業に対するジェンダー・ステレオタイプ:自己効力、性役割態度との関連に着目して

安達 智子(大阪教育大学)

我が国における性別職域分離の問題は今なお根強く残されている.すなわち職業選択において,男性は伝統的に男性が多くを占める領域に,女性は女性が多くを占める領域に集中し,異性が優位な領域を避ける傾向がみられる.本研究はこのような社会背景を念頭において,職業に対するジェンダー・ステレオタイプと自己効力,性役割態度の関連性について検討をくわえた.研究では,大学生383名(女性218・男性165)を対象として,VPI職業興味検査のMF尺度より男性職7つと女性職7つを用いて職業に対するジェンダー・ステレオタイプと自己効力を測定した.得られた結果から,大学生の男女がともに男性職は男性的,女性職は女性的であるとのジェンダー・ステレオタイプをもつことが明らかにされた.研究2では,565名の女子大生を対象として,職業に対するジェンダー・ステレオタイプと自己効力,性役割態度の関連を検討した.その結果,伝統的な性役割態度をもつ者はそうでない者よりも,職業に対するジェンダー・ステレオタイプが強固であることが見出された.さらに性役割態度は,男性的でも女性的でもなく中性的な職業に対するジェンダー・ステレオタイプと自己効力の結び付きを調整していた.以上,得られた知見をもとに,ジェンダー・ステレオタイプの認知に着目したキャリア支援・介入の方向性について議論を展開した.

キーワード : キャリア選択, 職業に対するジェンダー・ステレオタイプ, 自己効力, 性役割態度, 大学生

「産業・組織心理学研究」に掲載された論文についてはJ-STAGEにて全文閲覧することが可能です。

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