本研究の目的は,職場の若年層における同僚間での達成動機の伝播について,関係する要因を明らかにし,「自己充実的達成動機」と「競争的達成動機」の2側面に焦点を当て,伝播の過程を探索的に検討することである。８人の組織で働く人に対するインタビュー形式で予備調査を行い,アンケート形式によって得られた355名の回答データを解析することによって,パス図が示された。 主な調査結果は下記の通りであった。(1)「同僚の自己充実的達成動機の推測」は「自己充実的達成動機の変化」に,「同僚の競争的達成動機の推測」は「競争的達成動機の変化」にそれぞれ直接的な影響を与えていた。(2)「同僚の達成動機の推測」は,｢同僚の参照勢力の認識｣「同僚の達成動機への反応」を介して,「個人の達成動機の変化」に間接的な影響を与えていた。(3)間接的な影響により、「同僚の自己充実的達成動機の推測」は個人の２種の達成動機を高め、「同僚の競争的達成動機の推測」は個人の２種の達成動機を低下させていた。